「スクールを卒業しても現場で活躍できない理由」〜最前線の現場を知るWeb制作会社代表が語る“学び”と“現場”のギャップ〜

「スクールを卒業しても現場で活躍できない理由」 〜最前線の現場を知るWeb制作会社代表が語る“学び”と“現場”のギャップ〜
「スクールを卒業しても現場で活躍できない理由」〜最前線の現場を知るWeb制作会社代表が語る“学び”と“現場”のギャップ〜

「スクールを出たらすぐ現場で活躍して、仕事ができて、稼げるようになる」

そう考えている方は多いと思いますし、それを願ってWeb業界の門を叩こうと学んでIT業界に飛び込んでくる方が大勢います。

しかし、実際に現場で採用・指導を行っている立場から見ると、
学んだこと=すぐ使えるスキル
ではないのが現実です。

ここでは、私たちランチパッドテクノロジー&パートナー株式会社が運営する
相模原市立産業会館パソコン&プログラミング教室
での生徒指導と、自社の制作業務の両面から、その理由をお伝えします。

スクールは“学びの場”であって、“現場の訓練場”ではない

スクールでは、Word、Excelを始め、PhotoshopやIllustlator、さらにHTML、CSS、JavaScript、VBAなどのプログラミング言語まで体系的に学ぶことができます。
しかし、実際の現場では以下のような事が求められます。

①クライアントの意図を読み取り、提案できること
クライアントは必ずしも分かりやすい言葉でご要望を伝えてくれません。

「もう少し明るい感じで」「見やすくしたい」「動きをつけたい」など、抽象的な言葉でイメージを伝えてくることがほとんどです。

その言葉の裏にある“本当の目的”を読み取ることができなければ、的外れな提案になってしまいます。
たとえば「明るく」と言われた背景には、「若い世代にも親しみを持ってほしい」という意図が隠れているかもしれません。

現場では、指示をそのまま形にするだけではなく、
「こういう意図でしょうか?」
と一歩踏み込んで確認・提案できる力が重要です。
受け身ではなく、提案できる制作者こそ信頼されます。

②仕様変更や納期変更に柔軟に対応できること
案件が進行する中で、仕様変更や納期の前倒しは日常茶飯事です。
たとえば今週中の納品だったのが、急に「明日までに出してほしい」と言われることもあります。

そのときに「できません」と突っぱねるのではなく、
・どの作業を優先すべきか
・どの部分を簡略化すれば間に合うか
・追加対応にかかるコストをどう説明するか

といった判断・調整が求められます。
つまり、“変更に強い人”は、仕事が途切れることなく、継続的に依頼があります。

③チームや社外パートナーとの調整力
WEB制作は一人で完結しません。
営業、デザイナー、エンジニア、ライター、カメラマン、印刷会社、クライアント担当者など、多くの人と関わりながら進めます。

その中で大切なのは、「自分の担当部分だけをやる」姿勢ではなく、
全体の流れを理解し、他者の作業をスムーズにする意識です。

コーダーがクラス名を統一すれば、他の案件でも応用が効き、効率アップが図れる。
デザイナーが画像を軽くして納品すれば、SEO担当は表示速度の調整で画像のサイズは気にしなくても良い。
など、相互に何を必要としているかを知ることでチーム全体の効率化が図れます。

現場で仕事を任せられるのは、「自分の仕事+周囲の動き」を考えられる人です。

④納品後のケア
制作が無事完了し、納品が終わっても、仕事は終わりではありません。
納品後に「画像が表示されなくなった」「スマホで見たら崩れている」「印刷の色が思っていた色と異なる」などのトラブルは必ず発生します。

このとき、「自分の担当ではない」と切り離すのではなく、
原因を切り分け、仮説を立てて検証したり、代替案を検討する姿勢が求められます。

たとえば、キャッシュの問題か?ブラウザの互換性か?サーバー設定の影響か?
など不具合には様々な要因が考えられますが、状況を整理して確認することで、的確な対応ができます。

トラブル対応は、経験やスキルだけでなく冷静さと責任感の試される場面です。
ここで迅速に的確に対応できる人が、最終的に「お客様から信頼される人」になります。

つまり、【専門的な知識】よりも「責任感」や「スピード感」が問われます。
これらの対処方法はスクールでの座学では絶対に学ぶことができません。現場での実践の積み重ねが必要です。

実際に採用・育成して感じたスキルのギャップ。。。

弊社でも、スクール卒業後の方を雇用・研修した経験、またスクール卒業後、フリーランスで仕事を請け負っている方を外注さんとしてお仕事をお任せしたことがたくさんあります。

共通して言えるのは――

「多様な顧客環境や、変化する顧客要求に対応できず、”作業が止まっている”」

という点です。

こんな経験はありませんか?

①WordPressでテーマを作れるが、他人が作ったコードを読めない
スクールで一からテーマを作る課題を経験していても、実務では「既存サイトの修正」をするケースが多いです。
しかし、他人が書いたコードには独自の命名規則やCSS構成などがあり、どこを直せばいいのか理解できず手が止まってしまうケースがあります。

たとえば、「トップページのメインビジュアルのテキストを更新してほしい」と依頼しても、どのテンプレートファイルに該当部分があるのか探すだけで数時間かかる。
修正自体は10分で済むのに、“コードリーディング力”の不足で作業全体が止まる——これが現場の実情です。

②ヒアリングが甘く、クライアントの望むデザインを提案することが出来ない
「かわいい感じで」「シンプルに」「落ち着いた雰囲気で」など、抽象的な表現をそのまま受け取ってデザインを進めてしまう。
結果として、クライアントの頭の中にある“かわいい”と制作者の“かわいい”のギャップが埋められず、修正が何度も発生する。

たとえば、飲食店サイトで「かわいいデザイン」と言われたとき、クライアントは“ナチュラルで温かみのある雰囲気”を想定していたのに、制作者は“ポップでカラフルな配色”にしてしまう。
結果、「イメージが違う」と言われ、方向性を最初から見直すことに。
デザイン以前に、ヒアリング力・質問力・提案力の不足が大きな課題です。

③デザインは整えたが、納期に間に合わない
スクールでは「自分のペース」で作品を仕上げられますが、実務では納期があります。
作業工程を逆算できず、1つのページに時間をかけすぎてしまい、全体が遅れるケースが多いです。

たとえば、1週間で5ページを作る案件で、トップページのデザインを完璧にしようと3日使ってしまう。
さらに、クライアントの企業調査や競合分析に時間をかけすぎてしまい、デザイン作業に入るのが遅れることもあります。
もちろん、企業理解やターゲット分析は重要ですが、この状態に陥ると、結果的に納期が圧迫されてしまいます。

その結果、残りの下層ページが間に合わず、クオリティを落として納品することに。
現場では、“完璧な1ページ”よりも、“期限内に全体を仕上げる段取り力”が評価されることも多くあります。

現場では“80点を期限内に出す”力も求められます。
100点を目指して納期を過ぎた結果、トラブルに発展するケースも多々あります。

現場では納期を守るマネジメント力の方が信頼されるのです。

④「わからない」ときに調べ方がわからない
現場では「答えがどこにもない」問題がよくあります。

インターネットで検索するにしても、検索キーワードの選定や、公式ドキュメントや、英語の技術サイトを読む力が不足していると、解決までに何時間もかかってしまいます。

例えば、WordPressで「特定カテゴリーの記事だけを非表示にしたい」場合、
「category exclude」などのキーワードで検索すればすぐ情報が出るのに、
「カテゴリー 記事 出ない」と日本語で漠然と調べて、関係のないブログ記事ばかりヒットしてしまう。
さらに、エラーが出ても英語メッセージを読まずに「何かバグが出た」とだけ報告してしまう。

同じことはデザインデータの入稿でも起こります。
たとえばDTPの入稿する際、
「画像の解像度が足りない」「塗り足しがない」「アウトライン化されていない」などのエラーが出たときに、修正方法がわからず、先輩社員にやってもらうことになる。

実際には、印刷会社の入稿ガイドを確認すれば、ほとんどの問題は自己解決できる内容です。

現場では、“知っているか”よりも“自分で調べて解決できるか”が重要です。
“調べ方を調べる力”こそ、最も実務に直結するスキルの一つと言えるでしょう。

こうした点は、実際のプロジェクト経験がないと身につかないスキルです。

実務は「不確定要素」との戦いです。

現場では、「仕様が途中で変わる」「想定外のエラー」「急な修正依頼」などが日常茶飯事です。

こうしたときに必要なのは、

①問題を切り分ける力
トラブルが発生したときに、原因を冷静に整理できる人は強いです。
たとえば「サイトが表示されない」といっても、
サーバーの障害なのか、プラグインの競合なのか、コードミスなのかで対応は全く違います。

焦っていろいろ触るより、
「どこまでは正常に動いているか」を見極めて範囲を絞る——これが“問題を切り分ける力”です。
この力がある人は、無駄な時間を使わず、混乱を防ぎます。

現場では、“慌てず整理できる人”が最も信頼されます。

②代替案を即座に提示する力
トラブルや変更が起きたとき、「できません」では仕事が止まってしまいます。
「別の方法なら対応可能です」「一時的にこうしておきましょう」と、代替案を出せる人は重宝されます。

たとえば、予定していたプラグインが使えなくなった場合は他の手段を提案する。
納期に間に合わない場合は最低限必要なページを先に公開する。
印刷物で色味が出ない場合は簡易校正を先に見せて合意を取る——

そんな判断ができるのは、「技術」よりも「現場感覚」がある人です。
完璧を目指すより、“今できる最善”を考えられる人が、最終的に信頼を得ます。

③チームで解決に向かう姿勢
一人で全て解決できる人はいません。
困ったときに黙り込むよりも、「今ここまで試しました」「ここが原因かもしれません」と共有するほうが、結果的に早く解決します。

他メンバーの作業を止めないために早めに報告する。
誰かがトラブル対応に入っているときは他の作業をフォローする——
そうした行動ができる人は、どの現場でも重宝されます。

“助けを求める力”も、現場における大事なスキルです。

つまり、“技術よりも考える力”が問われることが現場では多くあります。
スクールでは「正解」を学びますが、現場では「最適解」を探す力が重要です。

学びは“スタートライン”にすぎない

スクールで学んだことは、あくまで土台作り、活躍するためのスタートラインに立つ準備をしただけです。
本当の成長は「現場で仕事として学んだスキルを使ってみる」ところから始まります。

私たちの教室では、単なる“学び”や“習い事”ではなく、
「現場につながる思考力」
「現場で通用するスキル」
を身に付けることができる活きた講座の実践を心がけています。

これからも、「学び」と「現場」をつなぐ架け橋として、地域の皆さんのスキルアップを応援していきます。

須田 美穂
ランチパッドテクノロジー&パートナー株式会社 代表取締役
相模原市立産業会館パソコン&プログラミング教室 教室長 

当校のIllustrator講座・Wordpress講座は下記リンクよりご確認いただけます。

「スクールを卒業しても現場で活躍できない理由」 〜最前線の現場を知るWeb制作会社代表が語る“学び”と“現場”のギャップ〜

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

相模原市立産業会館パソコン教室は、相模原市で一番お役に立てるパソコン教室を目指し、パソコン初歩からWord、Excel、PowerPointの資格取得、スマホ操作まで幅広く対応いたします!子ども向けプログラミング教室も大人気!ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

コメント

コメントする